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Rollei35と目測式ピント合わせの話

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ごぶさたです。ちょっとカメラ趣味的な話も増やしたいと思いまして、今回は愛用のカメラの中からRollei35(ローライ35)について取り上げてみます。弟分のRollei35Sのほうがアニメに出演したとかで特に若いみなさんの注目も集めたりしてるみたいです。

さて、このRollei35は目測式ピント合わせというところがけっこう話題になるのです。目測式とはつまり「2mかな」と思ったらフォーカスリングを2mの指標に合わせるということです。Rollei35はかわいいカメラなのだけど、このような当てずっぽうに思われるピント合わせが欠点のように言われることが多いようなのですね。今回の記事はこれを否定したい。ピントを外すなんてことはないんだと言いたいのですね。さてどうなるか。続けましょう。


スナップの撮り方

Rollei35はスナップに向いたカメラだと言われます。ライカより小さなボディとレンズシャッターによる静音性を備え、レンズの焦点距離は40mmの準広角だからです。この時点でわかる人とわからない人で撮影のイメージが違ってしまうのだけど、撮影の基礎を勉強してきているならわかるでしょう。わからない人は今、モヤっとしながら読んでいると思うのだけど、すぐに種明かしをするから辛抱して付き合ってほしいです。なぜならこれがRollei35のメタな部分でして、すなわち当時の超高級コンパクト機ですから最初の1台として買うことは想定されていない。Rollei35のユーザーは写真をそれなりに撮ってきた人で、Rollei35はサブカメラの位置付けだと、そういうわけなのですね。そのため今の時代にしてRollei35を使おう(または売ろう)と考えたなら、まずは撮影の基礎という知識を求められるのです。

面倒なことは言いません。ここでは簡単に。なんせスナップですから。スナップとはパチっと撮ることです。なのでピント合わせそのものをしないのがスナップです。具体的なセッティングを紹介します。

観光地や路地で人物を撮影するとき

F11でピント指標を3mに合わせておく。すると2~9mの距離内はピントが合います。人物の大きさと画角の関係からいって2m以内で撮ることはないです。そんな近づいたら顔のアップになっちゃう。反対に9m以上も離れていたら小さすぎて面白くない。人物がメインなら構図的には3~5mの距離で撮るはず。このとき、ネガのフィルム感度は400を使い、シャッタースピードは日向なら500分の1秒、日陰や曇りなら125分の1秒にする。

このセッティングが可能なのは40mmという準広角レンズであるところに秘密がある。レンズは広角になるほどピントの合う範囲が深くなるのだけど、それだけのことでなく、標準レンズである50mmに慣れている人ならば40mmはピントの深さも画角も余裕が生まれる。Rollei35の四角いボディはカメラの向いている方向を捉えやすく、それなりに撮影してきた人ならばファインダーを覗く必要すらないという寸法だ。非常によく考えられたカメラだと感動してしまう。

室内で人物を撮影するとき

このお題はどうだろうか。正直に言ってフィルムカメラで室内撮影をするときはライトかフラッシュが必要だ。だから諦めてデジタルで撮影したらいいと思うのだけど、それでもフラッシュを使えば撮影はできるし、昔は確かにそうやってたはずなのだ。というわけで次のようなセッティングはどうだろう。ただし、私のフラッシュはRollei E15Bというものだ。フラッシュはモノによって明るさが違うので参考に留めてほしい。

F16またはF22にしてピント指標は1.5mか2mにする。シャッタースピードは60分の1秒か、もっとゆっくりでもかまわない。室内では3m以上も離れられるほどスペースがないことが多いので1~2mの距離が写ればよいという考えだ。

つまるところスナップでは決定的瞬間を捉えるために速写性を重視するので、屋外・室内のいずれにせよ絞っておき、自分が周囲の変化に気付くことのできる距離感にあらかじめピントを置いておくのだ。逆を言えば10m先で面白いことが起こっていたとしても気付けないだろうし、ごく近くにいる人があなたを意識せずに面白い行動を取るわけもないので、それならそれで「そのポーズいいね、ハイチーズ」などと声をかけて撮るのであれば決定的瞬間ではないということでもある。そういう理由でもってスナップでピントが合わないなんてことはありえない。

それでも絞りを開放したい

さっきは絞る話ばかりしたけれど、Rollei35は3.5、Rollei35Sは2.8という、それなりの明るさのレンズを持っている。これを活かさない手はないし、やっぱりフラッシュなしで撮影したいこともある。

ここでようやく目測という話が出てくるのだけど、じつは撮影に慣れた人であれば得意な距離は体が覚えている。だから目測についての1つの真実はひたすらに練習ということがいえる。私も1mはよく使うので(古いレンズは最短1mが多いのだ)、1mだけは体に覚えさせてある。2mはそれより簡単になる。距離が遠いほどピントが深くとられるからだけど、2mというのは「相手と自分の間に布団が敷けるかどうか」をイメージすれば易しいのだ。他には腕を水平に伸ばして相手と握手すると1mくらいだとか、自分の体をものさしとして使えるようにアチコチ測っておくのもいいし、ポケットに入るサイズのレーザー距離計を使えば確実でもある。ただ、人や生き物が相手ならレーザーを向けないように気をつけたい。人相手なら、わざと握手したり、そういうのも場の空気をつくるためにはいいと思う。

登山者は優遇される

Rollei35は登山者が用いることを想定したという話も聞く。これは事実であるように思える。Rollei35には、それがスナップ用とするには不思議なことに、露出計がついている。当時、高級コンパクト機をサブに持つような人がネガフィルムの露出に手こずるわけはなく、この露出計は明らかにリバーサルフィルムを使うときのためのものに思えるのだ。リバーサルフィルムはカラーネガフィルムに比べて解像力が1.5倍ほどあるので大きく引き延ばしてプリントする予定のときに使う。また、解像力が求められるのは森の木々を撮影するようなときだ。

そのような状況を考えていくと、開放絞りを使う必要がわりとあることに気付く。朝夕や森の中は暗いのだ。遠景であれば無限遠に合わせるので朝焼けの空と山々を撮るには困らない。一面の花畑を撮るときは面を斜めに捉えればよいので これも困らない。問題はリュックサックくらいの大きさのものをドンと撮りたいときだ。通説のままなら目測を鍛えるしかないように思えるが、じつはそうではない。

登山をしている人はもう答えがわかっているだろう。そう、登山用ストックを使えばいい。ただそれだけだ。知らない人のために説明すると、登山用ストックには長さ調節のための目盛りが刻まれている。これで90cm、1m、1.2m、1.5mくらいまできっちり測れる。腕も含めて事前に測っておけば1.5mと2mが確実になるだろう。こうなると目測式でなく実測式だ。とにかく、小さめなものを撮りたいときに90cmを測って確実に開放絞りを使えることは背景をボカすのにもいい具合だし、登山用ストックは一脚として使えるモデルも用意されているのでスローシャッターの助けにもなる。登山者はRollei35のことで何も困らないばかりか、むしろもっとうまく使うことができるのだ。

といったところで、最後に登山時の作例を2つ掲載して終えようと思う。フィルムはコダックのエクター100 カラーネガフィルムを使用した。コダックCDのデータのまま補正はしていない。webで見たり、L判プリントにするには十分だろう。

スナップ撮影。このくらいの距離だと質感がよく写る。

かなり解像力が必要な条件。階調は美しい。

さて、ついでになるが大事なことを書き添えておくと、風景写真においてRollei35が中判や大判のフィルムカメラの代わりになるかというと、私見では無理だと言うしかない。試しに7200dpiでスキャンしてA2にプリントしてみたのだけど、これは数値上300dpi出力でA1に対応する画素数を持っているわけで、すなわちA2なら600dpi出力に足る画素数であるにも関わらず、出てきたプリントを見るとディティールが足りないのだ。まぁ、わかっていたことだけれど、作品としての品質を求めるならプリントサイズはA3か四つ切りまで、その際のフィルムはリバーサルフィルムか、それよりも解像力を持っている黒白フィルムということになると思う。なお、エクター100の粒状性の素晴らしさはさすがだ。

私のRollei35のレンズがテッサーだからなのかは判断していないけど、被写体の距離は5mくらいまでがスイートだと感じる。目測を鍛えるならそのくらいの距離を目処に取り組んでみてはいかがだろうか。

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